「正しさ」は自動的には手に入らない
インターネットが普及した頃、私たちは「検索すれば真実に近づける」と信じた。
だが2020年代後半の今、AIが生成するもっともらしい文章や、感情だけで拡散される情報が日常に溢れ、「調べること」そのものが難しくなってきた。
AI時代の情報リテラシーとは、情報の海から真実らしさではなく事実の芯を探し出す能力のこと だと思う。
AIが情報の質を上げたのではなく「説得力のある誤情報」を増やした
AIは膨大なデータをもとに文章を組み立てる。
その結果、私たちよりも「それっぽい文章」を高速で生み出すことができる。
しかし AI は真実を保証しない。
- 一次情報を見ずに、ネットに転がる曖昧な情報を再利用する
- 新しい憶測を、それらしく言語化してしまう
- 引用元の信頼性チェックをしない
私たちが「説得力=正しさ」と誤解した瞬間、AIは真実よりも“納得できる嘘”を量産してしまう。
「見抜けない自分」がリスクになる時代
フェイクニュースの恐ろしさは、発信者の悪意ではなく「受け手の無防備」にある。
- SNS の拡散速度は検証速度をはるかに上回る
- 権威性・多数派・感情が判断を奪う
- 自分の信じたい情報だけがタイムラインに集まる
もはや「誰が正しいか」ではなく
「自分が誤情報の出口にならないか」が問われている。
誤情報を避けるための思考チェック 5つ
- 一次情報はあるか? — 出所を見に行ったか
- 統計や研究の条件を確認したか? — 母数・対象・期間
- その文章は利益相反を抱えていないか?
(広告・提携・政治的立場・販売目的など) - 自分が信じたい方向にだけ合致していないか?
(バイアス自己診断) - 事実と意見を混同していないか?
(感想・推測・価値観は事実ではない)
この5つを通過できない情報は、共有も判断もいったん止めるべきだ。
AI時代だからこそ「私たちの鈍感力」が武器になる
皮肉なことに、テクノロジーが進むほど
私たちは「急がない力」「距離を取る力」を持たないと誤る。
- 即断しない
- 感情で反応しない
- 疑わしいものは寝かせる
- 2つ以上の異なる立場の情報を並べる
それだけで誤情報に巻き込まれる確率は大幅に下がる。
情報は“受け取るもの”ではなく“扱うもの”へ
AIが文章を生み、SNSが拡散し、私たちが反射的に信じる —
この循環は今後さらに強まるだろう。
だからこそ問われるのは、
「何を知ったか」よりも「どう扱ったか」 である。
情報は自動的には正しくならない。
「読む側の態度」こそが、これからの情報リテラシーの核になる。