「若い頃とは、体が変わったなあ」
ふとした瞬間に、そう感じることはありませんか?
たとえば、朝の散歩での歩き出し。以前は意識せずとも足が前に出ていたのに、最近はなんだか体が重い。
あるいは、楽しみにしていたご友人とのゴルフ。後半になると足腰が踏ん張れず、スコアが崩れてしまう。
駅の階段で、手すりがないと少し不安を感じる……。
多くの方は、こうした変化を感じたとき、こう考えるのではないでしょうか。
「年齢のせいだから仕方がない」
「筋肉が落ちたから、もっと鍛えなきゃ」
そして、ジムに通い始めたり、スクワットを頑張ったりします。
でも、もしその努力が、かえって体を疲れさせているとしたらどうでしょう?
実は、あなたが感じているその「なんとなく無理をしている感じ」。
それは筋力不足のサインではありません。
「体の使い方が、ちょっとズレているよ」という、体からの愛あるメッセージかもしれないのです。
「疲れやすさ」の本当の理由
実は、私たちの疲れの多くは、立っているだけで始まっているのです。
家を建てるときを想像してみてください。
土台が傾いていたら、どんなに立派な柱を立てても、家は歪んでしまいますよね。体もそれと同じです。
- 立ち方が整っていると: 骨格が体重を支えてくれるので、筋肉は休むことができます。動き出しもスムーズです。
- 立ち方が曖昧だと: 骨で支えられない分、筋肉が常に「緊張」して体を支えようとします。つまり、立っているだけでエネルギーを浪費している状態です。

「すぐに疲れる」「動きが硬い」のは、あなたの体力が落ちたからではなく、この「立ち方のズレ」を筋肉が必死にカバーしてくれているからなのです。
すべての動きは「立ち方」で決まる
ここで、少し意外なお話をします。
毎日の歩行、ゴルフ、そして相撲。
一見まったく違う動きに見えますが、実はこれらすべて、「同じ場所」から始まっています。
それは、「どう動くか」ではなく「どう立っているか」です。
つまり、散歩が疲れるのも、ゴルフのスイングが崩れるのも、階段で不安を感じるのも、すべて根っこは同じだということです。
だから、難しい運動を覚える必要はありません。
今日お伝えする「立ち方」ひとつを身につけるだけで、あらゆる動きが変わっていきます。
今日からできる「馬の姿勢」
頑張らない、ただ「乗る」感覚
では、どうすれば「疲れない立ち方」ができるのでしょうか。

古くから武道などで伝わる「馬の姿勢」という姿勢をご存じでしょうか。
「馬」と聞くと、空気椅子のような辛い修行をイメージされるかもしれませんが、私たちが目指すのは真逆です。
- 「体を休ませるための立ち方」です。
ぜひ今、その場で30秒だけ試してみてください。
【実践! 無理をしない 「馬の姿勢」 チェック】
・足幅はゆったりと
肩幅より、足一つ分くらい広めに開いてみましょう。
それだけで安定感が増します。
・膝は「カクン」と緩めるだけ
ここが一番のポイントです。
ピンと伸びた膝のロックを外すように、「カクン」と緩めるだけでOK。
・股関節に「乗る」
足の付け根(コマネチのライン)に、
上半身の重さをストンと預けるイメージです。
腰を落として安定を感じます。
・上半身はダラリと
肩も腕も、力を抜いてください。
何もしなくていいんです。
いかがでしょうか?
太ももがプルプルするようなら、腰を落としすぎています。もっと楽に、もっと高く。
終わったあと、「あ、地面をしっかり踏んでいるな」「ふっと体が軽いな」と感じたら大成功。
それが、あなたの本来の「自然体」です。
趣味も生活も、「構え」を見直すだけで変わる
この「立ち方」の感覚がつかめると、冒頭でお話しした「体の変化」が、まったく違って見えてきます。
毎日の散歩が、最高の「健康診断」に

覚えていらっしゃいますか?朝の散歩で感じた「体が重い」という感覚。
実は歩くという動きは、とても正直です。
立ち方がズレていると、すぐ疲れたり、膝や腰が痛くなったりします。
逆に、立ち方が合っていれば、どこまでも長く歩けるようになります。
歩くときは、ご自身の体にこう問いかけてみてください。
「今日の体の使い方は、心地よいかな?」
痛みや疲れが出たら、立ち止まって「馬の姿勢」を思い出してみる。それだけで、散歩は最高の健康診断に変わります。
ゴルフは、スイングより「アドレス」

ゴルフで調子を崩すと、どうしても「スイング(腕の振り)」を直そうとしがちです。
しかし、上級者が見れば原因は一目瞭然。「構えた時点で、すでに無理がある」ことが多いと言います。
- 立っただけで肩に力が入っている
- 早く打ちたくて前のめりになっている
- 下半身がグラグラする
これらはすべて、立ち方が体に合っていないサインです。
「馬の姿勢」の要領で、股関節にスッと体重を乗せて構えてみてください。余計な力みが消え、クラブがスムーズに振り抜ける感覚が戻ってくるはずです。
後半でスコアが崩れていたのは、疲れのせいではありません。最初の一打から、すでに無理な立ち方をしていただけなのです。
相撲の四股(シコ):筋トレではなく「確認作業」

相撲の「四股(シコ)」も、誤解されがちな動きです。
あれは、地面を強く踏みつける筋トレではありません。
- 「今の立ち方で、自分の体重を片足で支えられるかな?」と、自分の体と対話する作業です。
片足になったとき、グラつかずに立てるか。
足を下ろすとき、ドスンと落ちずにゆっくり戻せるか。
シコ踏みは、体を追い込む動きではありません。
- 「体に無理が出ていないかを確認する、丁寧なメンテナンス」なのです。
もし駅の階段で不安を感じるなら、それは筋力が足りないのではなく、片足で立つときの「立ち方」が不安定なだけかもしれません。
プロの世界でも見直されている「壊さない技術」
「そんな簡単なことでいいの?」と思われるかもしれません。
しかし今、プロ野球などのトップアスリートの世界でも、この考え方が重要視されています(山本由伸選手のMVP獲得以来、よく耳にする矢田修氏の矢田メソッドなど)。
彼らが大切にしているのは、筋力増強よりも「体を壊さないこと」です。
- 無理に力を出させない
- フォームを細かく矯正しない
- まず「正しく立てているか」「構えが崩れていないか」を見る
プロのアスリートでさえ、「筋力」ではなく「立ち方(構え)」に立ち返っています。
私たちシニア世代が、これを実践しない手はありません。
さいごに
年齢を重ねた体は、もっと賢くなれる
「無理をしている感じがある」
もしそう感じているなら、それはあなたの体が衰えたからではありません。
体があなたに、こう教えてくれているのです。
「もう、力任せに頑張らなくてもいいよ」
「もっと楽な方法があるよ」
年齢を重ねるということは、できないことが増えることではありません。
- 「自分の体を壊さず、長く使い続けるための"賢い使い方"」を身につけていく過程です。
まずは、テレビを見ながら、歯を磨きながら、「フッ」と膝を緩めて立ってみる。
それだけで、朝の散歩が軽やかになり、ゴルフの後半でも疲れなくなり、階段での不安が消えていきます。
すべては、たった一つの「立ち方」から始まります。
今日から、頑張らない「立ち方」、はじめてみませんか?