テクノロジー / ITとAI

もう“作る”は難しくない:iPhoneで試すバイブコーディング

最近、私は強く感じています。 いまはもう、「プログラムを作る」という行為そのものが、以前とはかなり違うものになっていると。

少し前まで、プログラムを作るといえば、まず専門的な知識が必要で、環境を整えて、文法を覚えて、エラーと格闘して、ようやく形になるものでした。 しかも、AIに手伝ってもらうとしても、思ったようにはいかず、結局はエラーだらけで実用にならないことも多かったと思います。

けれど今は、その空気が明らかに変わってきました。

自分がやりたいことを自然な言葉で伝える。 すると、その言葉をもとに、実際に動くものが少しずつ形になっていく。 私はその変化を、iPhoneの上で実感しています。

そして、これは若い人だけの話でも、エンジニアだけの話でもない。 むしろ、私たちシニア世代にこそ、面白い変化が起きているのかもしれない、と思っています。

バイブコーディングは、特別な人だけの話ではない

最近は「バイブコーディング」という言葉を見かけるようになりました。 細かいコードを一つひとつ自分で打つというよりも、まずは「こういうものを作りたい」「ここをこうしたい」と言葉で伝えながら形にしていく流れです。

「バイブ(vibe)」という英語には、「雰囲気」「感覚」「ノリ」といった意味があります。 つまりバイブコーディングとは、ざっくりいえば「ノリと感覚で、言葉を使いながら作っていくコーディング」のことです。 難しそうな名前ですが、やっていることの本質はとてもシンプルです。

頭の中にある曖昧なイメージや不便さを、まず言葉にする。 その言葉をもとに、少しずつ形を整えていく。 つまり、コードを書くことそのものよりも、自分の考えをどう伝えるか が前に出てきたのです。

これは、長年にわたって言葉を使い、経験を積んできた私たちシニア世代にとって、むしろ得意な領域ではないでしょうか。

なぜiPhoneが面白いのか

この話が面白いのは、何も本格的な開発環境が必要なわけではないことです。 手元にあるiPhoneで、思いついた時にそのまま試せる。 この気軽さは、思っている以上に大きいと思います。

パソコンの前に座って、机に向かって、「さあ始めよう」と気合を入れるのではなく、 ふと不便を感じた時、 「こんなものがあれば便利かもしれない」と思った時、 その場で試し始めることができる。

iPhoneは、これまでどちらかといえば「使うための道具」でした。 けれど今は、それが少しずつ「形にするための入口」にもなってきています。

この変化は、静かですが、かなり大きいと思います。

実際に試してみると見え方が変わる

私自身、最近Pythonista(※iPhoneの上でプログラムを動かせるアプリです)を使って、いくつかの小さなアプリを作りました。 最初から完璧な設計図があったわけではありません。

「こういう記録がしたい」 「ここにこのボタンがほしい」 「この動きはもう少しこうなってほしい」

そんなふうに、やりたいことを言葉で伝えながら少しずつ調整していきました。


最初に作ったのは、ライフログアプリです。

私たちの世代になると、一日があっという間に過ぎてしまうことがあります。 気づけば夜で、「今日は何をしていたのだろう」と感じることも少なくない。 そこで、毎日の出来事や気分をさっと記録して、一日を振り返れるアプリを作ってみました。

life_logアプリのスクリーンショット

記録したデータはiCloudに保存されるので、iPhoneだけでなくパソコンからも見返すことができます。 「あの日、何をしていたっけ」が、すぐに確認できる。それだけのことですが、思った以上に便利でした。


次に作ったのは、呼吸法アプリです。

朝、少し落ち着いて呼吸を整えたいと思うことがあり、「自分の好きなタイミングで使えるものがほしい」と感じていました。 それを言葉で伝えてみたところ、約5分で動くものができあがりました。

完璧な出来ではなくても、「自分が使いたいもの」が手元にある。 その感覚は、既製品のアプリとは少し違うものがありました。


他にも、小遣い管理や連絡先アプリも作りました。

世の中の連絡先アプリは機能が多すぎて、自分には余計な項目ばかり。 小遣い帳も、シンプルに自分の使い方に合ったものがなかなか見つからない。 そこで、自分に必要な情報だけをピックアップした、完全に自分専用のアプリを作りました。

お小遣い帳アプリのスクリーンショット

さらに便利なのが、iPhoneのショートカット機能との組み合わせです。 ショートカットに登録しておけば、Pythonistaを意識することなく、普通のアプリと同じように起動できます。 ホーム画面に並べておけば、もはや「自作した」という感覚すらなくなります。

iPhoneショートカットに自作アプリを登録したところのスクリーンショット

ここで実感したのは、ただコードが出てくることではありません。 自分の中にある不便さや違和感が、会話を通して少しずつ道具になっていく ということでした。

これは、体験してみると印象が大きく変わります。 外から見ると「AIがコードを書いた」という話に見えるかもしれません。 でも実際にやっている側の感覚は、少し違います。

むしろ近いのは、 「頭の中にある曖昧な考えを、対話を通して整理しながら形にしていく」 という感覚です。

長年、仕事や暮らしの中で「こうしたらどうか」「ここをもう少しこうできないか」と考え続けてきた経験が、そのまま活きる場面だと感じました。

少し前とは、確かに違う

ここで大事なのは、私は最初から何でもうまくいくと言いたいわけではない、ということです。 やはり修正は必要ですし、思った通りにいかないこともあります。 一回で完成することばかりではありません。

ただ、それでもなお、少し前とは違うと思うのです。

以前なら、途中までは面白くても、最後はエラーばかりで実用に届かないことが多かった。 けれど今は、修正を重ねることで、ちゃんと使えるところまで持っていける。 この差はとても大きいです。

「面白いおもちゃ」ではなく、 「実際に役に立つ小さな道具」が作れる。

ここまで来たことに、私は素直に驚いています。

感動したのは、コードではなく「使える」ということ

私が感動したのは、難しいプログラムが書けたことではありません。 もっと単純で、もっと大事なことです。

それは、思いついたことが、形になるまでの距離が短くなった ということです。

これまでは、 「こうだったら便利なのに」と思っても、 その先には知識の壁があり、時間の壁があり、環境の壁がありました。

ところが今は、その最初の壁がかなり低くなっています。 自分の言葉から始められる。 しかも、手元のiPhoneですぐ試せる。

この変化は、プログラミングが得意な人だけのものではありません。 むしろ、日常の中で小さな不便を感じている人ほど、その価値を実感しやすいのではないかと思います。

そして、小さな不便に気づく目は、長く暮らしを積み重ねてきた人ほど、豊かに持っているのではないでしょうか。

小さな不便を自分で解決できる時代へ

世の中には便利なアプリがたくさんあります。 けれど、自分にぴったり合うものが必ずあるとは限りません。 少し違う。 もう一歩こうだったらいい。 そう感じる場面は意外と多いものです。

これまでは、その「少し違う」を我慢するしかありませんでした。 でも今は、その小さな違和感を、自分で形にしてみる道が少しずつ開いています。

もちろん、最初から大きなものを作る必要はありません。 本当に小さなことでいいのだと思います。

毎日つけたい記録。 自分用に並び替えたい一覧。 押しやすい位置に置きたいボタン。 そういう「自分の暮らしにだけ必要なもの」は、案外、自分の言葉から生まれるのかもしれません。

「こんなアプリが世の中にあればいいのに」と思い続けてきたこと、ありませんか。 それは実は、自分で作れる時代になっているのかもしれません。

まず試してみる価値がある

バイブコーディングという言葉だけを見ると、少し流行のように見えるかもしれません。 けれど実際には、それはもっと地に足のついた変化だと私は感じています。

自分の考えを言葉にする。 言葉にしたものを、少しずつ形にしていく。 その最初の一歩を、いまはiPhoneで始めることができる。

これは、思っている以上に大きなことです。

もし今、 「こういうものがあったら便利なのに」 という小さな思いつきがあるなら、 それはもう、試してみる価値のある種かもしれません。

iPhoneだから今すぐに試せる。 そして今は、それがただの遊びではなく、実用に届く時代になってきています。


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