ロボット開発と収益化の壁
アメリカのボストン・ダイナミクス社は、世界最先端のロボット技術を誇りますが、収益化では苦労してきました。近年は物流や警備といった用途を絞り込み、保守サービスやコンサルティングを展開しつつ、親会社の現代自動車グループやDHLなどとの提携で市場を拡大しようとしています。
一方で、日本のロボットメーカーは基礎技術で世界をリードしながらも、「どう収益につなげるか」で苦戦する姿が目立ちます。これは単に技術力の差ではなく、文化的・社会的な背景に由来する部分が大きいと感じます。
日本的なアプローチ ― 余白を残す文化
日本のメーカーには「こんなこともできる」と提案し、使い道はユーザーに委ねる姿勢が強くあります。
- 強みは、現場の工夫から思いもよらない応用が生まれること。
- 弱みは、ユーザーがそこまで試行錯誤する余裕がない場合、導入されにくいこと。
これは良くも悪くも「みんなで育てる」思想。カイゼン文化や現場改善の延長線上にある発想といえます。
欧米・中国との違い
- アメリカ:失敗は経験。ベンチャーキャピタルや政府契約が挑戦を後押しする。
- 中国:国家主導でスピード重視。失敗してもすぐ次の事業を立ち上げられる。
- 日本:失敗は信用失墜。リスク回避にエネルギーを注ぎやすい。
つまり、同じロボット開発でも「失敗の意味づけ」が国ごとに全く異なるのです。
教育と挑戦する心
では、なぜ日本では挑戦が希薄になりやすいのか。
背景には教育のあり方があります。詰め込み型で「間違えないこと」を重視してきたため、失敗から学ぶ姿勢が育ちにくい。
しかし、大谷翔平のように世界へ挑む人もいる。彼のような存在に共通しているのは「強い意志+支える環境+成功体験」。教育の現場で「挑戦する価値観」をもっと育てられれば、社会全体が変わっていくはずです。
魅力ある知識へ
これからの教育に必要なのは「覚えること」から「使いたくなる知識」への転換です。
- 興味のある題材から学びを広げる。
- プロジェクト型で実際に試す。
- AIに暗記を任せ、人間は問いを立てる。
そして何より、「自分を輝かせるにはどんなアプローチがあるか」を考える習慣を持つこと。これは年齢に関係なく大切な問いかけだと思います。
おわりに
失敗を恐れない社会と、日本的な「みんなで育てる思想」。
両者は相反するようでいて、実は補い合える関係かもしれません。挑戦する心を育てる教育、そして余白を残して市場に委ねる文化。その交わる場所にこそ、日本発のイノベーションが生まれる可能性があるのではないでしょうか。