エッセイ・思考

年賀状は、手紙以上の贈り物

― 60歳からのつながりを育む習慣 ―

お正月といえば年賀状。
かつては毎年当たり前のように書いていたものが、今では「SNSで済ませる時代」と言われるようになりました。
確かにスマホは便利です。写真もメッセージも一瞬で届けられます。
けれど、不思議なことに、年賀状にはスマホでは代えがたい特別な温もりがあります。


スマホの挨拶は「情報」、年賀状は「気持ち」

SNSの挨拶は次々と流れていきます。
「どこから返そうか」「既読スルーは気まずい」──そんなプレッシャーさえあります。

一方で年賀状は、流れません。
宛名を見て、差出人を思い浮かべる。
自分のために選ばれた言葉が、手書きの文字になって届く。

そこにあるのは
情報ではなく、相手の気持ちなのです。

机に置いて、何度も眺める。
時間がたっても、あの日の笑顔が心に浮かびます。


60歳からは、年賀状の力がますます必要になる

仕事を離れ、連絡をとる人も絞られてくる時期。
「急に連絡していいのかな…」
「迷惑じゃないかな…」
そんな思いから、距離が生まれがちです。

でも年賀状なら、自然につながりを保てます。

返事が来るだけで、嬉しい。
その人の字を見るだけで、声が聞こえる。

年賀状は、
「私はまだ誰かとつながっている」
その実感を静かに与えてくれるんです。


年賀状を読む──それは贅沢な時間

お正月の朝。
温かいお茶を片手に年賀状を手に取る。

ゆっくり宛名を追い、昔の思い出がよみがえる。
写真の成長に驚き、短い言葉から元気をもらう。

年賀状は、
急がず味わえるコミュニケーションです。

飾っておけば、いつでも気持ちを思い出せる。
スマホの画面では、こうはいきません。


年賀状は未来の自分への贈り物

あるお年寄りは、いつも年賀状を箱にそっとしまっていました。
孫が箱を見つけて広げると…

「この人は昔、おじいちゃんと同じ会社だったんだ」
「わあ、この頃若かったんだね!」

当時の交流が、未来に会話を生む。
年賀状は、
人生の記録を未来へ手渡す宝物にもなるのです。


今年は、少しだけ出してみませんか?

全部の人に送る必要はありません。
大切に思う人へ、数枚だけ。

手書きの一言だけで十分です。

「今年もお元気で」
「またお会いしましょう」

それだけで相手は、きっと笑顔になります。

年賀状は、時代遅れではありません。
むしろ今、心が求めている習慣なのかもしれません。

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