「定年して時間はたっぷりあるはずなのに、なぜか毎日ソワソワする」
「夜、布団に入っても今日の出来事が頭を巡って眠れない」
「ちょっとした家族の言葉に、ついイラッとしてしまう」
もし、そんなふうに感じているなら、それはあなたの心が「お疲れさま」とサインを出しているのかもしれません。
私の友人(67歳・男性)も、まさにそうでした。
「何もしない」ができない。ある友人の物語
彼は現役時代、バリバリと働いていた努力家です。引退して自由を手にしたはずなのに、彼はこう溢らしていました。
「何をしていても、どこか落ち着かないんだよ。ずっと何かに追われているような、気が急いでいる感じが消えないんだ」
そんな彼に私が勧めたのが、「数息観(すそくかん)」という、ただ呼吸を数えるだけの習慣でした。最初は彼も半信半疑。
「呼吸なんて生まれてからずっとやってることだ。今さら数えたところで、何が変わるんだい?」
ところが、3日ほど続けた朝。彼から穏やかな声で電話がありました。
「不思議だね。気づいたら肩の力がスーッと抜けていたよ。久しぶりに、心の中に“余白”が生まれたような気がするんだ」
道具も準備もいらない。「引き算」の健康法
「数息観」とは、古くから日本の禅の修行でも大切にされてきた、極めてシンプルな呼吸法です。
今の世の中、健康のために「あれを食べよう」「これを学ぼう」と足し算ばかりを勧められますが、シニア世代に必要なのは、むしろ「心の中を空っぽにする引き算」の時間かもしれません。
【やり方はたったこれだけ(3分でOK!)】
特別な道具も、体の柔軟性も必要ありません。椅子に座ったまま、今日から始められます。
- 座る: 背筋を「スッ」と軽く伸ばして座ります。手は太ももの上に置きましょう。
- 吸う: 鼻から自然に息を吸い込みます。
- 吐く・数える: ゆっくり息を吐きながら、心の中で「いち……」と数えます。
- 繰り返す: 次の呼吸で「に……」。これを「じゅう(10)」まで繰り返します。
- 戻る: 10までいったら、また「いち」に戻ります。
「雑念」は、起きていいんです
やってみると分かりますが、途中で「今日の昼飯は何かな?」「あ、数がわからなくなった!」と、雑念が必ず湧いてきます。
でも、それでいいんです。
「あ、今よそ見したな」と気づいて、また「いち」に戻る。
この「気づいて、戻ってくる場所がある」ということ自体が、あなたの心をどっしりと安定させてくれます。
雑念に気づいた瞬間こそ、あなたの心が整い始めている証拠です。
3分間の「数息観」がくれる、4つの贈り物
毎日少しずつ続けることで、体と心に優しい変化が訪れます。
| 変化 | どうして起きるの? |
| 夜が穏やかに | 「吐く」を意識すると自律神経が整い、心身がリラックスモードへ。 |
| 肩こりがふっと楽に | 呼吸が深くなることで、無意識に入っていた上半身の力が抜けます。 |
| イライラが静まる | 頭の過活動が静まり、「今、ここ」の穏やかさに立ち返れます。 |
| 集中力が戻る | 脳の疲れがリセットされ、趣味や読書がもっと楽しくなります。 |
今日から、小さな一歩を
まずは1日3分、朝起きて椅子に腰掛けた時や、お茶を飲む前のひとときに試してみませんか?
最後に、件の友人が残した言葉をご紹介します。
「歳を重ねると、足し算より『引き算』の方が心地いい。数息観は、余計な荷物を下ろすための最初の一歩だったよ」
深呼吸ひとつで、今日という一日が昨日より少しだけ優しくなる。
そんな穏やかな時間を、あなたも自分にプレゼントしてみませんか。