何かの決断に迷って、一歩踏み出せないときはありませんか?
「このまま進んでよいのだろうか」
「家族に、どう声をかければよいだろう」
「新しいことを始めたいけれど、今がその時だろうか」
年齢を重ねても、迷いがなくなるわけではありません。
むしろ経験が増えるほど、物事には一つの正解だけではないと分かってきます。
そんなとき、昔の人が長い年月をかけて育ててきた「易(えき)」に耳を傾けてみるのも、一つの方法です。
この記事では、難しい漢文や専門用語をできるだけ使わずに、易占いの基本から楽しみ方までをご紹介します。
「答えを教えてもらう占い」ではなく、「自分で考えるきっかけ」として読んでいただければ幸いです。
最後には、私が作成したスマートフォンやパソコンで気軽に使える易占い、アプリ「易のしるべ」の使い方も説明します。
易占いは、未来を決めつけるものではありません。
今の状況を別の角度から眺め、自分で考えるための手がかりとしてお楽しみください。
易とは「変化を読む」知恵
「易」という字には、「変わる」という考えが込められています。
晴れの日が続けば、やがて雨が降ります。
春の次には夏が来て、人の気持ちも社会の様子も少しずつ変わります。
良い時がいつまでも続くとは限らず、苦しい時も永遠には続きません。
易が見つめているのは、このような世の中の変化です。
そのため、易占いの問いは「何が起きるか」だけではありません。
- 今はどのような時なのか
- 何が変わろうとしているのか
- どのような姿勢で向き合えばよいのか
- 進むべきか、待つべきか
こうしたことを、陰と陽の組み合わせから考えていきます。
『易経』は、六十四卦(ろくじゅうしけ)と各爻(こう)に付された文章、それらを解説する「伝」から成る古典です。
京都大学貴重資料デジタルアーカイブでも、その基本構成が紹介されています。
易経は、占いの本であり人生を考える本
ここまでは易そのものを見てきました。
では、その考え方を支えている『易経』とは、どのような本なのでしょうか。
易のもとになった書物が『易経(えききょう)』です。
「周易(しゅうえき)」とも呼ばれ、中国古典の「五経」の一つに数えられてきました。
もともとは占いに使われた書物ですが、後世には政治、道徳、自然観、人生観を考えるための本としても読まれるようになりました。
単なる吉凶の一覧表ではなく、「物事はどのように移り変わるのか」「変化の中で、人はどう振る舞うべきか」を考える古典なのです。
『日本大百科全書』の解説では、六十四卦と爻の占辞に加え、哲学的な解説である「伝」から構成されると説明されています。
だれが作ったのか
伝承では、古代中国の聖人・伏羲(ふっき)が八卦を考え、周の文王が六十四卦を整え、周公や孔子が解説を加えたとされます。
ただし、これは長く語り継がれてきた伝承です。
現在では、一人の人物が一度に書き上げたのではなく、長い時代を通して本文と解釈が重ねられ、現在の形になったと考えるのが一般的です。
「伝説か、史実か」とどちらか一方に決めるより、何世代もの人々が変化と向き合いながら読み継いできた書物、と考えると分かりやすいでしょう。
まず覚えたい「陰」と「陽」

易の記号は、とても単純です。使う線は二種類しかありません。
| 名前 | 形 | おおまかなイメージ |
|---|---|---|
| 陽爻(ようこう) | ━━━━ | 動く、明るい、外へ向かう、強い |
| 陰爻(いんこう) | ━━ ━━ | 受け止める、静か、内へ向かう、柔らかい |
陽が善で、陰が悪という意味ではありません。
昼が陽なら夜は陰、活動が陽なら休息は陰です。
働くことと休むことの両方が必要なように、陰と陽は対立しながらも、互いを補っています。
易では「今は陽を伸ばす時か」「陰に戻って休む時か」というように、釣り合いと移り変わりを見ます。
三本の線でできる「八卦」
陰と陽の線を三本重ねると、八種類の形ができます。
これを八卦(はっけ、または、はっか)と呼びます。
| 八卦 | 読み | 自然の象徴 | 人の動きとして見るなら |
|---|---|---|---|
| 乾 ☰ | けん | 天 | 創造する、力強く進む |
| 兌 ☱ | だ | 沢 | 喜ぶ、語り合う |
| 離 ☲ | り | 火 | 明らかにする、見極める |
| 震 ☳ | しん | 雷 | 動き出す、驚いて目覚める |
| 巽 ☴ | そん | 風 | 穏やかに入り込む、従う |
| 坎 ☵ | かん | 水 | 困難を越える、深く考える |
| 艮 ☶ | ごん | 山 | 止まる、区切る |
| 坤 ☷ | こん | 地 | 受け入れる、育てる |
これらは単なる天気や地形ではありません。
たとえば「山」は、動かずに止まること、「風」は、目に見えなくても少しずつ行き渡ることの象徴として読まれます。
六本の線でできる「六十四卦」
八卦を上下に二つ重ねると、8×8で六十四種類の卦ができます。これが六十四卦です。
コトバンクの六十四卦の解説でも、易経が六十四卦から構成されることが説明されています。
六十四卦は、人生や社会で起こるさまざまな状況を象徴します。
たとえば、次のような卦があります。
- 乾為天(けんいてん):創造する力が満ちている
- 坤為地(こんいち):受け入れ、支え、育てる
- 水雷屯(すいらいちゅん):始まりには困難が伴う
- 地天泰(ちてんたい):よく通じ合い、調和する
- 天地否(てんちひ):通じにくく、無理に進まない
- 地雷復(ちらいふく):本来の道へ戻り、再出発する
- 水火既済(すいかきせい):完成した後こそ慎重にする
- 火水未済(かすいびせい):まだ完成しておらず、可能性が残る
六十四卦には「ずっと大吉」「いつでも大凶」という単純な区分はありません。
良さそうな卦にも注意点があり、苦しそうな卦にも抜け道があります。ここに易の奥深さがあります。
卦は下から上へ読む
卦を初めて見ると、多くの人は上から読みたくなります。
しかし、易の六本の線は下から積み上げます。
一番下から順に、次のように呼びます。
- 初爻(しょこう)
- 二爻(にこう)
- 三爻(さんこう)
- 四爻(しこう)
- 五爻(ごこう)
- 上爻(じょうこう)
植物にたとえると、初爻は芽が出る前、二爻は地面に根を張る頃、三爻は内側から外へ出る境目、
四爻は新しい立場に入った頃、五爻は中心となって力を発揮する頃、上爻は物事が極まり次の変化へ向かう頃、と見ることができます。
同じ陽の線でも、どの位置にあるかで意味が変わるのです。
「本卦」「変爻」「之卦」とは

易占いの結果では、次の三つが重要です。
本卦(ほんか)
最初に得られた卦です。現在の状況、問いの背景、物事の基本的な姿を表します。
変爻(へんこう)
変化しようとしている線です。今まさに動いている点、注意すべき場所、転換のきっかけとして読みます。
之卦(しか)
変爻の陰陽を反対にして得られる卦です。「ゆく卦」ともいい、変化が進んだ先の傾向を表します。
必ずそうなる未来というより、「この流れが続くと、こちらへ向かいやすい」という見通しです。
変爻がない場合は、状況の軸がすぐには変わりにくいと考え、本卦全体をじっくり読みます。
三枚のコインで卦を立てる方法

本来の筮竹(ぜいちく)を使う方法は手順が多いため、現在は三枚のコインを使う「三枚銭法」が広く用いられます。
やり方は次の通りです。
- 一つの問いを心に置く
- コイン三枚を同時に投げる
- 表を3、裏を2として合計する
- 結果を一番下の線として記録する
- 同じことを六回繰り返す
合計は、必ず6、7、8、9のどれかになります。
| 合計 | 呼び方 | 線 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 6 | 老陰(ろういん) | 陰 | 陽へ変わる |
| 7 | 少陽(しょうよう) | 陽 | 変わらない |
| 8 | 少陰(しょういん) | 陰 | 変わらない |
| 9 | 老陽(ろうよう) | 陽 | 陰へ変わる |
「老」は悪いという意味ではありません。
陰または陽が極まり、次の状態へ移ろうとしていることを表します。
公平なコインなら、6と9はそれぞれ8分の1、7と8はそれぞれ8分の3の確率です。そのため、変わらない線のほうが出やすくなります。
三枚のコインで6から9を得て、下から六本の線を作る方法は、オレゴン大学の易経解説でも紹介されています。
良い問いの立て方
易は、問い方によって受け取りやすさが変わります。
答えを受け取りやすい問い
- 今の仕事には、どのような姿勢で向き合えばよいですか
- 家族との関係を整えるために、何を大切にすべきですか
- 新しい活動を始める前に、注意すべきことは何ですか
- この計画を進めるうえで、今の私に不足しているものは何ですか
避けたほうがよい問い
- 宝くじの当選番号は何ですか
- あの人は必ず私を好きになりますか
- 病気は治りますか
- 投資で必ずもうかりますか
医療、法律、投資などの重要な判断は、易だけで決めず、医師、弁護士、金融の専門家などに相談してください。
また、同じ問いを短時間に何度も繰り返すと、自分の望む答えだけを探してしまいがちです。
一度結果を得たら、しばらく考え、行動したうえで振り返るのがおすすめです。
結果を読むときの順番
難しく考える必要はありません。次の順番で読むと整理しやすくなります。
1.本卦の名前と全体像を見る
まず「今はどのような時か」をつかみます。細かい吉凶より、卦が示す場面を思い浮かべましょう。
2.自分の問いに置き換える
たとえば「山」が出たなら、止まること、境界を設けること、動かず見守ることのうち、今の問いに近いものを考えます。
3.変爻を見る
変爻があれば、どの段階に変化が起きているかを読みます。
初爻なら始まり、五爻なら中心的な役割、上爻なら極まりと次への移行が主題になりやすいでしょう。
4.之卦を見る
現在の状況が、どちらへ変わろうとしているかを見ます。
本卦と之卦の違いに注目すると、変化の方向が分かりやすくなります。
5.自分の言葉で一行だけ書く
最後に「今日から何をするか」を一行で書きます。
例:
今は結論を急がず、まず家族の話を最後まで聞く。
占いを具体的な行動へ結びつけることで、結果が日常の知恵になります。
吉と凶を怖がりすぎない
易に出てくる「吉」は、何もしなくても幸運が舞い込むという意味ではありません。
「この状況では、その進み方が道理に合っている」という助言として読むほうが実用的です。
同じように「凶」も、避けられない不幸の宣告ではありません。
「今のやり方には無理がある」「立ち止まって見直したほうがよい」という注意信号です。
車の信号でいえば、吉は周囲を確かめて進める青、凶は危険を避けるための赤です。
赤信号があるからこそ、安全に目的地へ向かえます。
易占いアプリ「易のしるべ」でできること
ここまでの内容は、実際に卦を立ててみると理解しやすくなります。
「実際に試してみたい」と思われた方には、私が作成した「易のしるべ」というアプリがあります。
「易のしるべ」は、初めての方でも三枚銭法を体験できる、シンプルな易占いアプリです。
主な特徴
- 占いたいことを文章で入力できる
- 三枚銭法に基づいて六本の爻を立てる
- 現在を表す「本卦」を表示する
- 変化する「変爻」を分かりやすく示す
- 変化の先を表す「之卦」を表示する
- 六十四卦の意味をやさしい日本語で読める
- 本卦と之卦それぞれについて、本来の卦意に沿った「今のあなたへ」を読める
- 日付、問い、出た卦、感じたこと、実際に取った行動を端末内に保存し、後から追記できる
- スマートフォンでも文字が見やすい
- ホーム画面に追加すれば、アプリのように起動できる
- 一度読み込んだ後は、通信できない場所でも使える
画面は落ち着いた和紙調の色合いで、文字と背景の差を大きくしています。
小さな文字が見づらい方は、iPhoneやブラウザの文字拡大機能も併用してください。
使い方
- 「占いたいこと」に問いを入力する
- 「卦を立てる」を押す
- 本卦の名前と説明を読む
- 変爻があれば、その位置からの示唆を読む
- 之卦を見て、変化の方向を考える
- 必要なら紙に一言だけ感想を書く
操作はこれだけです。コインを用意する必要はありません。
このアプリの解説について
このアプリに収録した六十四卦の説明は、古典の文章をそのまま現代語訳したものではありません。
初めての方が全体像をつかめるよう、各卦の主題を短い日本語でまとめています。
また「変爻からの示唆」は、『易経』にある三百八十四の爻辞を逐語訳したものではなく、爻の位置と陰陽の変化をもとにした入門用の案内です。
より深く学びたい方は、専門家の注釈が付いた『易経』の訳書とあわせてお読みください。
iPhoneのホーム画面に追加する方法
公開されたアプリをSafariで開き、次のように操作します。
- Safariの「共有」ボタンを押す
- 「ホーム画面に追加」を選ぶ
- 「Web Appとして開く」を有効にする
- 「追加」を押す
ホーム画面に「易のしるべ」のアイコンが現れ、通常のアプリに近い形で起動できます。
詳しい操作はApple公式の案内でも確認できます。
パソコンにアプリとして登録する方法
「易のしるべ」は、パソコンにもアプリのような形で登録できます。
登録すると、ブラウザのたくさんのタブに埋もれず、専用の画面で開けます。
最初に、公開された「易のしるべ」のページをインターネットにつながった状態で開いてください。
WindowsのMicrosoft Edgeで登録する
Windowsをお使いの方には、最初から入っているMicrosoft Edgeを使う方法が分かりやすいでしょう。
- Microsoft Edgeで「易のしるべ」を開く
- アドレス欄の右側に表示される「アプリをインストール」の印を押す
- 「インストール」を押す
- 必要に応じて「タスクバーにピン留めする」または「スタートにピン留めする」を選ぶ
インストールの印が見当たらない場合は、右上の「…」を押し、「アプリ」から「このサイトをアプリとしてインストール」を選びます。
ブラウザの版によっては、「その他のツール」の中に「アプリ」があります。
登録後は、Windowsのスタートメニューやタスクバーから、通常のアプリと同じように開けます。
登録済みのアプリは、Edgeのアドレス欄に edge://apps と入力しても確認できます。詳しくはMicrosoft公式の案内をご覧ください。
Google Chromeで登録する
Google Chromeをお使いなら、WindowsでもMacでも同じように登録できます。
- Chromeで「易のしるべ」を開く
- 右上の縦に点が三つ並んだ「︙」を押す
- 「キャスト、保存、共有」を選ぶ
- 「ページをアプリとしてインストール」を選ぶ
- 確認画面で「インストール」を押す
アドレス欄の右側にインストールの印が表示されている場合は、その印を押すだけでも進めます。
登録したアプリは、Chromeのアドレス欄に chrome://apps と入力すると確認できます。詳しくはGoogle Chrome公式の案内をご覧ください。
MacのSafariでDockに追加する
macOS Sonoma 14以降では、SafariからWebアプリとして追加できます。
- Safariで「易のしるべ」を開く
- 画面上部の「ファイル」メニューを開く
- 「Dockに追加」を選ぶ
- 名前を確認して「追加」を押す
Safariの共有ボタンから「Dockに追加」を選ぶ方法もあります。
追加後はDock、Spotlight、ホームフォルダ内の「アプリケーション」から開けます。詳しくはApple公式の案内をご覧ください。
登録するときの注意
- 最初の登録と読み込みにはインターネット接続が必要です
- 一度正常に読み込めば、通信できない時にも基本機能を利用できます
- 占いの記録は、登録に使用したパソコンとブラウザ内に保存されます
- 別のブラウザから登録すると、以前の記録が表示されない場合があります
- ブラウザの閲覧データやアプリのデータを削除すると、記録も消える場合があります
普段使っているブラウザを一つ選び、同じアプリから使い続けると記録を管理しやすくなります。
よくある質問
Q.悪い卦が出たら、予定を中止すべきですか
すぐ中止する必要はありません。「何に注意すればよいか」「進め方を変えられないか」を考えてください。
易の結果は命令ではなく、状況を映す鏡のようなものです。
Q.同じ質問をすると、なぜ違う卦が出るのですか
三枚銭法には偶然性があるためです。
だからこそ、何度も引いて多数決をするのではなく、最初の結果を現在の自分に届いた問い返しとして、しばらく考える使い方が向いています。
Q.毎日占ってもよいですか
一日の過ごし方を考えるために、一日一回の問いを立てる使い方もあります。
ただし、占わないと何も決められない状態にならないよう、自分の判断を中心に置きましょう。
Q.宗教ですか
易は古代中国の占筮から発展し、哲学や倫理の書としても読まれてきた文化的伝統です。
特定の宗教への入信を求めるものではありません。
Q.当たる、当たらないをどう考えればよいですか
未来の出来事を言い当てることだけを目的にすると、易の豊かな部分を見落とします。
結果をきっかけに、自分が見ないようにしていた問題へ気づけたか、より落ち着いて判断できたか、という点も大切です。
Q.記録を残したほうがよいですか
おすすめです。日付、問い、出た卦、その時に感じたこと、実際に取った行動を書いておくと、後から自分の考え方の癖や変化が見えてきます。
おわりに――占いの答えより、自分の中に生まれた問いを大切に
ここまで読んでくださった方も、何か一つ思い当たる問いが浮かんでいるかもしれません。
易は、はっきりした答えを一方的に渡すものではありません。
「本当に急ぐ必要があるのか」
「自分だけで抱え込んでいないか」
「進むことより、今は待つことが必要ではないか」
卦を眺めていると、こうした新しい問いが生まれます。
その問いこそが、迷いを整理する助けになるのかもしれません。
長く生きてきたからこそ分かることがあります。
一方で、慣れた考え方から少し離れてみることで、初めて見える道もあります。
静かに問い、変化を観る。
「易のしるべ」が、考えるための小さな時間をつくる道具になれば幸いです。